難しい英文、または長い英文の訳し方

今英文の査読作業をしています。他の人が訳した下訳を修正しています。この原文は簡単なものでは決してなく、一般の人なら訳したいと思わないものですので、下訳自体に間違いがあることは、仕方がないことです。

 

つまり原文は専門書なのですが、そのような難しい英文、または長い英文の下訳を確認していくと、ある種の傾向が見て取れます。

 

それは、主語と述語の関係をうまくつかめていないと言うことです。

 

難しい英文、長い英文を日本語に訳す際に、まずしなければならないことは、主語と述語を確認することです。これは、難しい英文の場合、言うほど簡単ではありません。主語を修飾する節、述語を補足する節が複数入り交じっているので、その文章の意味の要点となる主語と述語が不明瞭になっています。

読み手のバイアスも手伝うのでしょうが、ここで間違えると、まったく違った意味の訳が生まれることになります。そして、面白いことに、その文章を「自分のバイアス」に一生懸命解釈してしまうようになります。

つまり、ここでボタンをかけ間違えると、それからの努力はまったく無意味なものとなってしまうのでじっくりと時間をかけるべきところです。主語と述語です。

 

文章が難しかったり、長かったりすると、できることは、文章の文法的な規則に従って、直訳していくしかありません。その際の言葉を置き換えていく作業において、その文章がいったい何を言っているのかさえつかめないことが多々あります。

そして、できあがった日本文を読み、その英文が何を言っているのかのヒントをもらいます。

ここで、できあがった日本文からだけで、意味を酌み取ってしまってはいけません。この時の日本文は、訳者が文章全体の意味の展望も見えずに訳した文章です。全体として、原文の意味をつたえていない場合があるのです。

また、難しい文章の場合、ここまでの作業、つまり、英文を日本語に置き換えられただけで訳したことにしたくなります。ここまでの作業があまりにも辛いので、もうおわりにしたい気持ちになるのです 

残念なことに、ここでおわりにするわけにはいきません。後でその文章を読んでもらえれば分かりますが、ここまでの作業で生成された日本文は、日本文としてあまり意味が通っていません。

 

それでも、日本語になったと言うことで、もう少し原文の意味が把握できるようになります。そこで、また原文に戻り、その構造をもう一度確認します。主語と述語、修飾する節などの「位置関係」を確認するのです。

難しい英文や長い英文の場合、この二回目の作業でやっとしっかりと見えてきます。最初に理解した位置関係が間違いであったことに気づくことも多々あるのです。

 

そこで、今度は、英文と日本文を比べながら、日本語を整えていく作業が必要となります。これが、「下訳」です。難しい文章の場合、その「仮の訳」をまずは置いておき、次の文章を訳していきます。そして、最初に戻り、最初から日本語として読んでいくと、気づくところがあります。それを整えながら完成に持っていきます。

 

なかなか骨の折れる作業です。何でこんな作業を自分がしているのだろうかと時に思います。

 

 

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