「遊べない人」の心理学

原題は「Beyond Love and Work」ですが,邦題は「遊べない人の心理学」となっています。日本では,このようなタイトルが受けるのでしょうが,本書で扱っている内容は,「遊べない」という範囲にとどまってはいません。遊びの位置づけ,遊びを通じて成長過程を考察しています。また,各章では,いろいろな人の状況を例に取りながら説明していますので,学術書のように堅苦しい感じではなく,読みやすい内容となっています。遊びが人々の心をいやしてくれるのかという話が,症例を通じてあげられています。

この作者自身も「遊ぶ」ことができ,その大切さを認識しているからだと思いますが,共感を持って本文を読むことができました。

1つ例をあげれば,以下の下りにおいて,今の日本の社会に対して意味しているところは大きいと感じます。

「(危険を冒すことが思春期から青春期に特徴的な傾向だが)親の監視を離れて過ごす時間というものがないと,子供たちは,遊ぶこと,何かを作ること,達成することに対する,あのわくわくするような気持ちをなくしてしまう。(p.198)」

大人たちが子供たちに子供たちだけでいろいろな経験をさせるだけの度胸があるのかと考えてしまいました。

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