ブック・レビュー
この人が語る「不登校」
全国不登校新聞社編、講談社刊、2002
ISBN: 4062110830 定価1500円
不登校問題から見えてくる子どものホンネ。なぜ学校嫌いが生れるのか? 不登校は本当にいけないことなのか? 各界で活躍する人々が、自分の体験を踏まえて問題の本質に迫った、元気のでる提言集。(「MARC」データベースより)
この本は、大きく2部より構成されます。パート1は「不登校から何が見えたのか」で、不登校を経験された人のインタビューです。羽仁未央/大平光代/安住 磨奈/辛淑玉/谷川俊太郎/渡辺位/岡本敏子/五味太郎/山口由美子さんたちが自分たちの不登校について語っています。パート2は「つまりは生き方の問題」で、椎名誠/落合恵子/吉本隆明/立川志の輔/森毅/大槻ケンヂ/ひろさちや/高木仁三郎/大田堯さんたちが不登校についていろいろな角度から述べています。ここですべてを引用したいぐらいですが、特に印象に残ったものを引用します。
「学校が合わない子供にとって、学校で過ごす時間は、ある種虐待をされているのと同じです。」(羽仁未央、29頁)
「(転機となったのは、小父さんに)最初は叱られたんですが、そのとき、『道を外したんはあんただけのせいやない』と言われたのが一番大きかったですね。 それまで、誰も私の苦しみやつらさを理解してくれなかった。だけど、この人だったら分かってくれるかもしれないと思ったんです。」(大平光代、47頁)
「学校の怖いところは、それが世界のすべてで、それ以外に世界があることを誰も教えてくれないですよね。」(安住磨奈、60頁)
「勉強というのは、分かるから楽しいので、わからないのにずっと教室にいるのは、つらいですよ。」(辛淑玉、71頁)
「僕は、繰り返しって言うのは、人間の実存の基本だと思っています。人間は、どんな偉い人でも、どんなスターでも、基本的には、毎日の日常生活の繰り返し を生きている。それが人間の生きていく基本的なあり方ですよね。(中略)基本的には毎日、平凡な日常を繰り返すことをちゃんと受け入れないと、人間はダメ なんじゃないかと思う。」(谷川俊太郎、84頁)
「子どもは大人に対して真剣に向き合っている。相手の言うことを真剣に受け止めようとしているんだ。ところが大人の方はすごくいい加減だ。都合によってあ れこれいって、ごまかす。その矛盾には全然平気な顔をしている。だから子どもが絶望してしまう。」(岡本太郎、岡本敏子談、107頁)
「(学校にいかないときやたらに不安がられたり心配されますよね)そういうとき、誰か他に『大丈夫』っていってくれる人がいるとちがうんだよな。これが一 人いるかいないかで、けっこうちがう。(中略)その『大丈夫』は、社会保障とかそういう意味じゃないよな。『何か生きていけるよね』って感じ。」(五味太 郎、126頁)
ここまでは、パート1の部分です。
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全国不登校新聞社
講談社 2002-02 |