統計の政治性

新たなエネルギー政策の策定に向けて実施したパブリックコメント(意見公募)において、意見の約9割が原発ゼロを支持しているとの分析結果を政府が発表した。

このような意見を受けて、「有識者たち」がどのようなことを言っているのか興味があったので、少し見てみました。

 

 寄せられた8万9124件のうち約7000件を分析したところ、「ただちに原発ゼロ」が81.0%、「段階的にゼロ」が8.6%だった。原発容認と支持は合わせて約4%にとどまった。残りの約8万件も集計が終わり次第、公表する。  

 委員からは「数値の解釈より、質的な分析、考え方の筋道を重視すべきではないか」「(7、8月)2カ月の国民的議論では(短すぎて)熟議できない」などの意見が出た。

http://mainichi.jp/select/news/20120823k0000m020052000c.html

 

 政府は27日、将来の原子力発電の比率など、中長期のエネルギー政策について寄せられた国民の意見を詳細に分析する有識者会議「検証会合」の第2回会合を開いた。

 政府の調査では、2030年時点の原発依存度「0%」案支持が、意見公募(パブリックコメント)の全体集計で87%、全国11会場で行われた意見聴取会の会場アンケートでも81%に上っている。

 会合では、これらの調査について、委員から「強い意見を持っている人が集まり、少数派が沈黙した可能性がある。(意見の)理屈は参考になるが、(支持率の)数字はあまり参考にならない」(田中愛治・早大教授)との指摘があった。

 政府が今月4、5日に開催した「討論型世論調査」の討論を踏まえた調査で「0%」支持が46%だったことについて、「準備時間が短すぎた。結果が世論とは評価しない」(小林傳司・阪大教授)との意見が出された。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120827-OYT1T00484.htm

 

「有識者たち」は、この統計結果について、そのデータ取得についての正当性を疑っているのである。そして、量的研究データに反論するのに、「意見」「考え」を使う。

状況のデータが逆になると、政府は、「民意」を表しているデータとして、正当性のあるデータとしてすぐ採用するのであろう。

 

以前カウンセリングをしていた女の子が、占いが好きだったのを思い出す。その子は、書店に行き、その日の運勢がその子にとって、前向きなものであるという占いを探すのだと、私に言ってくれた。良いのを読んで、ホッとして、その「占いさがし」をやめるのだそうである。

結局自分の必要なデータを探し、その必要性が満たされるものに正当性を与えているだけだろうと考えるのである。

 

私は、量的研究に対して、上で象徴されるような「研究者の意図」「願い」「方向性」が大幅に影響されるのである、とみなす立場を取っている。科学的という名目で、研究者の政治性を隠蔽しようとするのである。その研究者は、社会統制の一端をになっているに過ぎないという指摘なのである。

その「意図」「願い」「希望」をあからさまにしたものであれば、私の考えと違っていようとも、理解していきたいと考えている。つまり、原発で食っている人がたくさんいて、その人たちを何とかしないんですと言われた方がよっぽどすっきりするのである。それを、「国民のため」みたいな言い方、素人には分からないところがあるんだよみたいな言い方をするなと言うこと。

 

しっかり国民の意向をくみ取り、そのことに対して、一所懸命頭を絞りましょう。

ざっと見てみて、東京新聞の社説がまともでした。

 

【社説】

原発ゼロ 熟慮の民意が表れた

 二〇三〇年の原発比率をめぐる「国民的議論」の結果が出た。負担増を受け入れても安全を優先させたい「原発ゼロ」の民意が読み取れる。国民の覚悟の選択を、政府はただちに尊重すべきだ。

 これで「原発ゼロ」の声は無視できなくなったろう。野田政権が今後のエネルギー・環境戦略に反映させるとした国民的議論の結果が出そろった。意見公募(パブリックコメント)と、全国十一都市で開いた意見聴取会、さらに討論型世論調査である。

 これらの「国民的議論」は、三〇年の原発比率について「0%」「15%」「20~25%」の三つを選択肢とした。意見公募と意見聴取会の会場アンケートは、ともに八割以上が「0%」を支持した。

 とりわけ注目すべきは、国民同士の議論や専門家の話を聞き、その前後で意見が変化したかを調べる「討論型世論調査」の結果である。最多は「0%」支持で、討論前の32%から討論後は46%に大きく増えたのが特徴だ。

 事前の予想では、専門家の話を聞けば「原発ゼロ」支持は減るとの見方があったが、結果は逆だった。このことは「原発ゼロ」の選択が一時の感情などではなく、賛否多様な意見を踏まえ熟慮した末の決定を意味するものだろう。

 しかも、選択する上で何を最も重視するかとの問いには、「安全の確保」が80%強を占めた。原発維持派の大きな論拠である「電力の安定供給」(15%)や「発電費用」(2%)を圧倒したのは、電気料金が高くなったり省エネなど不便な生活をも引き受ける国民の覚悟の表れである。

 経済界は、脱原発では電力不足やそれに伴う企業の海外移転、失業増など経済が停滞すると主張している。これは、原発で稼いできた東芝、日立製作所や東京電力が中枢を占めてきた経団連の言い分である。枝野幸男経済産業相が「(原子力)依存度低下は経済のマイナスにつながらない」と反論したように、考慮すべき材料だが鵜呑(うの)みにすることはできない。

 低成長が定着し、大量生産・大量消費の時代はとうに過ぎ去り、国民の多くは省資源・省エネの暮らしを志向している。討論型世論調査でも、懸念される電力不足に対し、参加者の七割が「国民、産業とも省エネ余地がある」と、エネルギーを減らすライフスタイルへの転換を提案した。

 国民の重い選択を考えれば、政府が九月までに下す選択は「原発ゼロ」しかない。