「サボタージュ・マニュアル」から学べることは、現代社会の規範となっているような手続きなどが、かならずしも組織のためになっていないどころか、その活動の足を引っ張っているということがありうるということ。
特に、心理援助職として働くものとしては、「安全」がその規範的な概念となる。クライアントの安全というところから出発したものではあるが、専門職にとっての「安全」という目的にすり替わっていくところが興味深い。
心理援助活動において、クライアントの力を信じるという「賭け」は、安全という概念に常にあてはまるわけではない。それ故に、私たちは、私たちの活動を導く常識とされる規範を別の角度から検証していく必要がある。
このサボタージュ・マニュアルは、そのような別の角度から書かれた本であるだけに、考える機会を提供してくれているのだと思う。別の角度とは、いかに組織を回らなくするのかの手法を論点にしているということである。
至極まっとうそうなことを言う人は、結構困ったりするのだ。だからと言って、まっとうなことをいわない方がいいという意味ではないはず。組織として、どこで折り合いをつけていくのかそこが検討課題であろう。
内田樹が論じるような直感的な知を、組織としてどのようにしたら尊重できるのかが、その検討課題であると言い換えることもできそうである。
サボタージュ・マニュアル: 諜報活動が照らす組織経営の本質