カウンセリングの場面で、私は、相手の発語が直接的に意味することだけでなく、その発語が一体どの文脈から流れてきているのかについても理解しようとしています。
ここで直接的に意味することとは、その発語が私(聞き手)に直接的に訴えかけ、生じる意味合いことです。
時に相手の発語が直接意味することを追っていくと、全然見当違いの所にたどり着いてしまうことが多々あったからです。会話の終わりで、双方とも、いくらたくさんん話したからといって、満足感を持てない気がする時があったのです。
その発語が直接的に意味することをちょっと脇においておき、次のような問いかけを自分自身に向けるのです。
- それを言っておく必要があると感じるのはなぜなのか
- 質問に対する答えが直接的なものではなく、まったく別の所に飛んでしまうように見えるのはなぜなのか
- そのことによって、その人のどのような側面を伝えようとしているのか
- その人にとって、当たり前すぎて発言していないことはないのか。その当たり前の前提が発言されないために、その発語が理解できないでいるのか
- その人の言葉の使い方にどのような特徴があるのだろうか。その言葉の使い方の特徴が、私の理解様式と異なるために、私が上手くキャッチできていないのではないだろうか。
その人はどのような世界にいて話をしているのか、ということを探るという表現も可能かもしれません。
このような探索を続けていくと、ある時点で、その人のことが分かっていると、曖昧さは残るものの、もう少ししっかりと把握できている気持ちになれます。
カウンセリングにおいて、この状態に至ることを「理解する」と考えたいと思っています。相手の発語が直接的に意味することを「理解する」ことではないのです。
相手がその言葉で意味させようとしていることを、なんとか受け取る努力をしたいのです。