毎年、数え切れないほどの論文が世に出される。そのほとんどはその時の読まれたきりで、後にその価値を見出されることがないものである。ところが、特定の領域において繰り返し繰り返し引用され、その意味を検討されるような論文がある。
野村直樹氏は、そのような論文のひとつを紹介してくれる。それは、グーリシャンとアンダーソンによる論文「言語システムとしてのヒューマンシステム」である。原文は、「Human systems as linguistic systems: Preliminary and evolving ideas about the implications for clinical theory
H Anderson, HA Goolishian – Family process, 1988」である。
書籍という形で重要な論文を紹介する試みについてはたいへん興味をそそられる。なぜならば、通常論文を訳して日本の読者に紹介する機会はなかなかないと思うからである。日頃から、もっと重要と見なされる文献が紹介される機会があるべきであると思っていたので、このような形があるのかと思った次第である。
そして、このような文献を原文を訳しただけで紹介されたところでなかなか理解が追いついていかないことがある。そのため、ある程度の解説が必要となるが、書籍という形式を取ることによってこそ可能となっている。私自身はアカデミア(学究的世界)に身を置くものではないので、一般の人にもアクセスできるような形式で紹介してくれることはたいへんありがたい。
さて、本書の論文であるが、読み応えがある。何回か読まないといけない。しかし、この内容がどうしてここまで重要な位置づけを持ったのかに思いをはせながら読むことは意義があると思う。
協働するナラティヴ──グーリシャンとアンダーソンによる論文「言語システムとしてのヒューマンシステム」 | |
ハーレーン アンダーソン ハロルド グーリシャン 野村 直樹 Harlene Anderson Harold Goolishian
遠見書房 2013-07-23 |