リフレクティング・チームとしてのDefinitional Ceremony(定義的祝祭?)

リフレクティング・チームと定義的祝祭

ナラティヴ・セラピーの用語で、私自身少し避けていた用語があります。それは、リフレクティング・チームという用語の方がすっきりしている感があったからです。また、その用語から、そのことの概念がうまくくみ取れないため、うまく説明できなかったというのもその理由です。

その用語とは、Definitional Ceremonyというもので、「定義的祝祭」と訳されています。

今、リフレクティング・チームのことを研修に組み入れたモデルについて、文章を書きたくて、マイケル・ホワイトがバーバラ・マイアフォッフから借用してきたDefinitional Ceremonyについて、やっと真剣に調べようしています。

このふたつの関係については、マイケル・ホワイトが「Reflecting Teamwork as Definitional Ceremony by Michael White」という論文で述べています。この論文は、次のサイトからPDFで読むことができます。

http://www.dulwichcentre.com.au/reflecting-teamwork-as-definitional-ceremony-michael-white.pdf

日本では、「人生の再著述―マイケル、ナラティヴ・セラピーを語る」に収録されています。

Definitional Ceremonyとは

Definitional Ceremonyが、どうしてリフレクティング・チームという概念と重なるのかについて想像するのは次の文章がよいと思います。

「諸文化が断片かしていたり深刻な混乱にあると、適切な聴衆というものは見出しにくくなります。自然の状態で見つからないのであれば、人為的に作り出さなければなりません。私は、こうした上演を『定義的祝祭』と読んでいますが、それは、さもなくば得られなかった聴衆を前にして、ひとつの解釈をはっきりと示すよう特別に意図された集合的自己定義だと理解しています。(Myerhoff, 1982, p.105)」(マイケル・ホワイト, 「セラピストの人生という物語」, p.153)

ここで述べられているのは、適切な観衆が自然の状態では見つけにくいので、人為的につくりましょうということ(Definitional)であり、その場面設定をCeremonyと読んでいるということです。すると、辞書的な訳語ではなく、その意味を酌み取って日本語を作り出すとすれば、「人為的な儀式」という言葉が容易に挙がってきます。

Definitionalとは

それでは、Definitionalの意味を少し検討してみます。

語源的には、Definition、そして、Defineとさかのぼれます。そこで、Defineを研究社の中辞典で調べると次のようにあります。

de·fine −動⃣ 他⃝ 1a 〈語句·概念などを〉定義する,〈語の〉意味を明確にする.→ b 〔+目+as補〕〈語句·概念を〉〈…と〉定義する.→ 2 〈真意·立場などを〉明らかにする.→ 3 〈…の〉境界などを定める; 〈…の〉輪郭を明瞭に示す; 〈境界·範囲などを〉限定する.→ 〖ラテン語「限定する」の意 (DE-+fīnis 「際限,末端」); 形⃣ definite,definitive,副⃣ definitely,名⃣ definition〗

ここでラテン語の意味である「限定する」という意味も興味深いところです。すると、Definitionalを人為的に「定義された」あるいは「境界を定められた」、もしくは「限定された」という候補が見えてきます。

Ceremonyとは

セレモニーはすでに日本語化していますので容易に想像できる言葉です。訳語としては、「儀式,式典」 、あるいは「(社交上の)儀礼,作法」があてられることが多いようです。

ここで、重要な意味づけは、ある手順によって物事が進行するような場面である、ということでしょう。

Definitional Ceremonyの訳語

「定義的祝祭」という訳語には、マイアフォッフの次の意味がうまく反映されていない感じがします。

諸文化が断片かしていたり深刻な混乱にあると、適切な聴衆というものは見出しにくくなります。自然の状態で見つからないのであれば、人為的に作り出さなければなりません。私は、こうした上演を『定義的祝祭』と読んでいます。

今までの意味づけを踏まえて、他の訳語の候補を考えてみましょう。

  • 「定義された儀式」
  • 「定義づけられたセレモニー」
  • 「限定的なセレモニー」

儀式やセレモニーに対して、「定義」という言葉を用いることは少ないので、「規定」のような他の言葉を探す可能性もありそうです。

  • 「規定された儀式」

儀式という行為は、それぞれの文化の中ですでに決まっていますので、新たに作り出すという側面も、つまり通常にありふれた儀式ではないという側面も組み込みたい欲求に駆られます。意訳しすぎとなるかも知れませんが。

  • 「人為的に形成された儀式」
  • 「人為的セレモニー」

この時点で訳語を固定することができませんが、このような言葉の候補を念頭に入れて、少し読みすすめてみます。現時点で何を選ぶのかと問われれば、「定義づけられたセレモニー」ですね。後で変わる可能性もがありますが。

やはり

私の好みとしては、リフレクティング・チームですね。こちらの方が、感覚的に親近感があります。

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