ナラティヴ・セラピーとは,ポストモダニズムや社会構成主義といった思想的な背景を持ちますが,オーストラリアのマイケル・ホワイトとニュージーランドのデイヴィッド・エプストンの貢献によってある程度のまとまりをもつに到った治療的姿勢とその技法です。少なくとも,このホームページ上では,この限定的な理解をもちいていきます。
Wikipediaに掲載されている一般的な定義を紹介します。なお,日本語版のWikipediaの内容(http://ja.wikipedia.org/wiki/ナラティブセラピー)と比べてみると,日本における範囲の広さをかいま見ることができると思います。
http://en.wikipedia.org/wiki/Narrative_therapy
ナラティヴ・セラピーは,私たちのアイデンティティが私たちの人生に対するストーリーまたは物語に見いだされるの説明によって形作られると考える。ナラティヴの実践家は,人々の豊かな物語や,生きていく上での軌道やモード,そして,それらに関連している可能性を十分に描写できるようにすることに興味を持つ。そして同時に,その人自身や主な人間関係に対する影響も含む,問題からの多くの影響を共同で詳しく調べていく。人の内部または一部としての問題というよりは,人の人生に影響をもたらす問題に焦点をあてていくことによって,距離が作られていく。問題の外在化または具象化によって,問題の影響を詳細に調べ,評価することを容易にする。人が意図,価値,希望,コミットメントを思案し,関連づけられるときにも,別の種類の外在化が同じように可能である。ひとたび価値や希望が人生における特定の出来事に位置づけられると,人の経験を「再著述」または「語り直す」ように助け,問題に対抗する行為として明確に存在するように助けていく。
「ナラティヴ」という用語は,私たちのアイデンティティの性質と関連する意味づけが多重の物語であることを反映している。特に,価値に対する再著述する会話や,特に影響を与えてくれた人々に関する「リ・メンバー」する会話は,問題から自分の人生を再び取り戻すための強力な手法となる。結局,ナラティヴの会話は,問題の方向性に反して,人生の別の方向性をハッキリさせていくように人を支援する。これには,人の持つ価値,希望,そして人生のコミットメントが含まれる。
ナラティヴ・セラピーは,「ナラティヴ」という名称が与えられましたが,「ナラティヴ」だけのものではありません。「問題の外在化」「独特の質問技法」「ディスコース・アプローチ」などの側面を持っています。これらが織物をなしているのです。