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檻のなかの子―憎悪にとらわれた少年の物語

☆☆☆

ケヴィンは15才になるが,幼少時の義父からの虐待のために,言葉を発することができなくなった。児童養護施設で,8年間,誰とも口をきかないで,机の下でおびえていた。この施設のスタッフが,トリィが選択性緘黙の治療をしていることを見つけ出し,トリィにコンタクトしてくる。そこで,トリィがケヴィンと関わるようになる。

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トリィの場面緘黙症状を有する子供への関わりも非常に興味があるが,場面緘默状態の子供が言葉を出すと言うことはこれほどのことなんだと思わされます。ケヴィンが声を出すこと,外出すること,水になれることに対する恐怖に打ち勝っていくところは,引きつけられました。

声が出た後は,非常に速いスピードで回復していくように見えるのですが,何年もあった症状がそのように短期間で無くなると言うことはやはりないようで,いろいろな浮き沈みを繰り返しながら,回復していきます。この間,トリィにもいろいろなことがあるのですが,めげずに関わることを続けていきます。

精神科医の斉藤学が後書きを書いているのですが,もしケヴィンがトリィに会わなかったらどのようになっていたかという問いに対して,これは比較的容易に想像できると書いています。長年の療養生活を送る「精神分裂病者(統合失調症者)」の中に,かつてのトラウマ性ストレス後遺症者たちがたくさんいるというのです。たしかに,ケヴィンがあの症状が続けば,精神科で統合失調症からくる緘默と判断されるのか十分にわかります。

日本の学校では,私の予想以上に場面緘默(選択性緘默)の子供がいます。家では普通に話せるのに,学校ではほとんど声が出ません。トリィはこのような子供にある手法を提案しています。この論文は,まだ英文ですが,トリィのホームページから読むことができます。

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