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「食べない心」と「吐く心」

「食べない心」と「吐く心」―摂食障害から立ち直る女性たち 「食べない心」と「吐く心」―摂食障害から立ち直る女性たちalt
小野瀬 健人

主婦と生活社 2003-10
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 摂食障害を語るときにどのような立場にからこの症状を見るかは重要なポイントである。筆者は、摂食障害の原因は、「心の傷が摂食中枢を故障させている」としている。ここで、「心の傷」とは「愛されたいという願望を強く否定するもの」としている。「この愛されたいという本能が否定され、強い危機感に襲われたときにすぐ近くにある食欲中枢がトラブルを起こしてしまうのである。」

 このような説明は誰のために一番有効な物語となっているかという視点で、この本を見ると摂食障害に苦しまされている人たちに対してである。摂食障害に苦しんでいる人々は、自己否定感、自責感などいろいろな点において、摂食障害そのもの以外の部分で苦しんでいる。摂食障害の主な原因が本人に原因があるのではなく、「親の関わり方からの否定により、自分の摂食中枢に障害が出ているという」言説は本人にとっては十分な救いとなりうる。

 一方で、その根拠を親以外に見ることをしていないので、親にとっては大変に厳しい内容となっている。親にとっては別の物語(言説)が必要とされるであろう。未成年の子どもの摂食障害と接するに当たって、親に対してこの説明を突きつけて、親との関係を維持することができないようであれば、治療そのものを継続できない。それでは何もならないと思う。

 その回復の過程については、筆者は4段階挙げている。まずは(1)つらいことを強くしっかり理解してくれる人に話すことによって「心の傷」が何であるかを見つけ、そしてそれを治し、(2)親と離れて暮らし、親を全否定し、親代わりを見つけて「親の愛の受け直し」をする。(3)目標を設定し、実績を積み重ねていくことによって「自我を再構築」する。そして、最終的に「親からの謝罪」を治癒の仕上げとしている。

 この過程そのものは、自助グループで行われている過程に重ね合わせることができた。筆者は同じ回復過程にいるグループワークのような治療に可能性を見いだしていないが、(1)の過程や(2)の過程を可能にするのは、同じ過程を経てきた「先に行く仲間」である。回復している人、その途中にある人、新しく入ってきた人が混在している自助グループの可能性を再検討できないものだろうか?

 この文章において、過去のリファレンスを一切参照していない文章なので、精神治療に身を置く人々に確信させるまでのものともなっていない。

 しかし、大切な点は、冒頭でも書いたように、今苦しんでいる人たちにとっては非常に有効な物語を提供しているように思われる。

『食べない心』と『吐く心』を越えて -摂食障害から立ち直る女性たち- 『食べない心』と『吐く心』を越えて -摂食障害から立ち直る女性たち-alt
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