文学が理解できない

子どもの頃から小説を読むことが好きだった。

思えば、最初は怪盗ルパンにはまったような気がする。その後、当然のことながら推理小説にかなりはまった。アガサ・クリスティ、コナン・ドイル、エドガー・アラン・ポーなどを順次読んでいった。読むことが苦ではなかったので、好きになった作者の小説をひとつひとつ読んでいった。

推理小説後は、SF小説である。ロバート・ハインライン、アイザック・アジモフ、アーサー・C・クラークを筆頭に読みあさっていた気がする。

司馬遼太郎の作品を知ってからは、歴史にも興味を持てるようになった。

 

これほど小説が好きであったが、学校の国語はまったく苦手だった。「それ」が何を指すのかなどといった問題がうまく解けないのである。国語のもっとも良い勉強は、できるだけ文章を読むことであると、何回も聞いたことがあったが、私にはまったくあてはまらなかった。

大人になって、国語には、どのように問題を解くのかについての決まりがあり、それに従えば、自ずと答えが導かれるのであると知るように至るが、子どもの頃は、「そんなこと誰も教えてくれなかった」。誤解のないように伝えておくが、一応平均点よりは上の点数はとれていた。しかし、理系教科ほどには点数が上がらなかったのである。

自分の文章の読み方は、他の人とは異なるのではないかと、悩んでみたこともあった。同じ文章を読みながらも、自分が得ている「情報」「解釈」はずれているのではないかという悩みである。これは、大人になった今でも、しっかりと否定するまでに至っていない。

 

小説が好きなのではあるが、文学といわれるものを読んでもその「よさ」がまったく分からなかった。この文章を、永遠と綴っているのは、いったい何のためなのだろうかと思ってしまうのである。情報として受け取ることができる、文章が描こうとしている風景も読み取れる、ところもある。しかし、自分の情緒面に訴えることがなかったのである。

一応、名作と言われるものは読んだつもりではあるが、、、

 

文学者と言われうる作者の中で、私が最初に好きになったのは、開高健である。別に開高健の文学作品を好きになったからではない。釣りが好きだったので、開高健の釣行記を読み始めたのである。その勢いで、開口の小説を全部読んだ。

そのときには、描写へのこだわり、表現へのこだわりが、文体としての流れがあるのだろうと思えた。ところが、小説としての楽しみは、私にとっては、釣行記の方が魅力的であった。開高健は、釣行記の書き方において、多くの著者に多大な影響を与えた。釣行記における文体や描写において、開高健の影響受けているのだということがよく分かるものに出会う機会が多々あったからである。

 

最近、内田樹の「昭和のエートス」を読んで、アルベール・カミュの「異邦人」を無性に読みたくなり、読んでみた。

少し本題とずれるが、良い書評とは何かについてうまく定義することができないが、確実に言えることは、その本を「自分でも読んでみたい」と思わせるものは、良い書評のひとつの大きな要素となり得るであろう。内田さんの文章には、その力があるように思う。

「異邦人」の概説はWikipediaから。

アルベール・カミュの小説。1942年刊。人間社会に存在する不条理について書かれている。カミュの代表作の一つとして数えられる。カミュが46歳の若さでノーベル文学賞を受賞したのは、この作品によるところが大きいと言われる。
日本語訳としては、新潮文庫版の窪田啓作訳が広く知られ、冒頭1行目の「きょう、ママンが死んだ。」という訳も有名である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%95%B0%E9%82%A6%E4%BA%BA_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC)

 

主人公のムルソーが、自分の友人に恨みを持っているアラビア人を殺してしまう。その動機を法廷で問われて、次のように答えた部分も有名な箇所である。

私は、早口にすこし言葉をもつれさせながら、そして、自分の滑稽さを承知しつつ、それは太陽のせいだ、といった。廷内に笑い声があがった。

 

50歳を前にして、文章を楽しむことが少しできたような気がする。しかし、やっぱり確証を持てたのは、文学をその文章の表現や描写という構成部分だけで楽しむことは、私にはできないと言うことである。全体を流れるストーリーが大切である。大人になって、異邦人に書かれているストーリーをより理解できるようになったので、より楽しめたと言うだけのような気がする。表現の巧みさなどについては、私は結局よく分からないのだと、再確認したのである。

 

料理を食べていて、「まずい」のは分かる。しかし、「おいしい」以上の領域において、私の味覚はその差を感知できない。同じようにしっかりと構成された文体、描写が明瞭に伝わる文体は、「おいしい」ものとして感じることができる。しかし、それが、どの程度すばらしいのかについては分からないようである。残念なことであるが、仕方がない。

 

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Algeria

 Algeriaで検索した写真。異邦人の舞台となった海の色はこんな色なのだろうか。