「ダイアローグ:精神分析と創造性」
前田 重治 (著), 北山 修 (著)
精神分析について
あまり精神分析のことについて読む機会がないので、読む機会があってよかったと思っています。
北山修氏の語り方を聞いていて、時代と共に精神分析も歩んできているのだと感じました。なぜならば、特に物語ということについて、精神分析以外のところで語られているものとかなりシンクロさせながら話をしているように見受けられたからです。当然、精神分析を本業にしている人ですので、それが「借用」されたものとしてではなく、すでに過去にいわれてきたことである、つまり「オリジナル」なものであるという線で話をされています。それはそうなのでしょうが、過去のことを、「そのように読んでいる」こと自体、時代と共にあると言うことなのだと思います。
現時点で精神分析を受けることがどの程度一般的にされているのかどうかについては、私はあまりしっかりとはつかんでいません。このような治療を望む人がいることは想像できますので、重要な技法のひとつであるとは思えます。
対談集について
日本人は対談集とか講演録を読むのが好きなのかもしれません。英語圏でこのような書籍はあまり読みませんので、何か文化的な要素があるのかも知れません。
対談集は気楽に読めるし、意味も分かりやすく伝えようとする意図を持って話をしてくれるので、分かりやすいのがよい点だと思います。
それでも、北山修氏の話は、まるっきりの素人に説明する内容ではないですし、展開もそれなりに早いと感じます。そのため、何を言っているのか、後で咀嚼する必要があるのではないでしょうか。
それから、前田重治氏の話も好感が持てます。
年齢を重ねると、たくさんのことを伝えようとする焦りがなくなるのかも知れません。そのため、対談集としては、理論的な話が好きそうな北山氏とうまくかみ合っている気がします。
「裏が無くなっていく時代」
「裏入学」、駅などの「裏口」が死語となってしまったように、私たちの時代には裏がなくなってきているという話をされています。このことはたいへん興味深く読むことができましたし、自分なりに広げてみたいことであると思います。
ただ、「裏」では、悲劇や惨劇なども起きてきた以上、無条件に受け入れることはできないことです。そのため、「裏」がないことからの影響を検討しつつも、「裏」の復帰を望むという単純な解決方法に帰してはいけないのでしょう。そのために、どのような手段が必要となるのか、私たちはもっと検討する必要があるのだと思いました。
おわりに
一気に読むことができました。対談集ですので、気楽に読むことができます。一度手に取ってみてください。
ダイアローグ:精神分析と創造性 | |
前田 重治 北山 修
遠見書房 2012-05-25 |