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読了「Mad In America(アメリカの精神病)」

昨日、ブログを書いた時点で、最終章とエピローグを読み終わっていなかったのですが、昨夜と今朝にかけて、一気に読んでしまいました。
 

いきさつ

ロバート・ウィティカ(Robert Whitaker)の著作に行き着いたのは、オープンダイアログのことを知人に教えてもらったからです。
フィンランドのウエスト・ラップランドでの活動が、西洋圏に紹介されるためには、それを紹介してくれる人が必要です。それが、ロバート・ウィティカだったのです。彼は、オープンダイアログのドキュメンタリー映画にも、インタビューを受けています。
日本語字幕付きで、このドキュメンタリー映画をYoutubeで全編見ることができます。
 

 

 オープンダイアログの驚異的な実績

オープンダイアログの治療実績を聞いて、驚かない人はまずいないでしょう。向精神薬の使用を最小限に抑えて、統合失調症からの回復率が80%にせまるというのですから。統合失調患者が、寛解期にいたる率のことではなく。治癒という意味です。寛解とは、「病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態。または見かけ上消滅した状態(デジタル大辞泉)」です。
そのため、このウェストラップランドの地区では、統合失調症の患者数そのものが少なくなっているというのです。
 

 理解を妨げるもの

精神科の看護師としてしばらく仕事をしていたことがありますので、統合失調症がどのようなものか、一般の人よりも知っています。そのような知識が逆に邪魔をしているのでしょう。幻聴、幻覚、奇異な思考などのエピソードを生じたものが、治癒するということをうまく思い描くことができませんでした。一度、統合失調症という診断が下されれば、一生、薬を飲み続ける必要があると信じていました。
それに、精神科の診断名があまり一貫性がないということを知っていましたが、統合失調症の診断は比較的明瞭なものであると、思い込んでいたと思います。
それを、話すだけの治療で治癒できるということは、まったく想像できませんでした。オープンダイアログで何をしているのかについては、まだこれから勉強していきますが、ナラティヴ・セラピーを今まで基盤にしてきたので、ヤーコ・セイクラの論文を読みながら、何となく想像できているところもあります。つまり、何がそこで起こっているのか、多少なりとも想像がつくのですが、それが、統合失調症の治癒につながるという想像ができなかったのです。
 

Mad In America(アメリカの精神病)で理解できたこと

ロバート・ウィティカのMad In America(アメリカの精神病)で理解できることは、統合失調症というそのものが明確な領域線を伴う疾患概念ではないということ。それから、過去におけるさまざまな取り組みの中で、そもそも、統合失調症というそのものが、回復可能なものであるということです。
これは、ロバート・ウィティカがたびたび引用している、WHOの比較研究に現れています。先進国と開発途上国で、統合失調症の予後を追跡調査すると、明確にその差が明らかになります。開発途上国の方が、回復しているのです。なぜなら、投薬治療を継続していないということがその大きな一因としてあがります。この説明は、上に紹介したドキュメンタリー映画の中で、ウィティカが説明してます。
これらのことから、薬物の副作用について、疑問が生じるのはもっともなことです。歴史の紐をほどいていくと、そこには、患者の権利をないがしろにしているとしか思えないような研究、医療行為が見えてきます。
Mad In America(アメリカの精神病)は、このような実体を歴史的に明らかにしたと書籍であると思います。
 

統合失調症の理解を変える

既存の、特に専門家が有している、統合失調症への理解を基盤にして、オープンダイアログの秘密を解くだけではいけないのではないだろうかと考え始めています。
上で述べたように、統合失調症という疾患概念を見直す必要があるのではないかと思うのです。その時点で、オープンダイアログのやり方が、特別な秘密のあるものとして理解されるのではなく、たいへん理にかなったものとして理解されるのではないかという、予測を持ち始めています。まだ、論文を読んだだけですので、もう少し調べていきます。
 

「精神病と統合失調症の新しい理解(Understanding Psychosis and Schizophrenia)」

British Psychological Society(英国心理学会)の臨床心理学部門は、昨年11月に精神病と統合失調症に関する報告書を無料で公開しました。今、翻訳パートナーのバーナード紫さんと訳していますが、こちらの報告書は、Mad In Americaとオープンダイアログの理解を助けるものになっていると思います。
 

 
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