異文化を学ぶワークショップの形式【異文化・ミニリサーチ】

 ニュージーランド・ハミルトン市にあるWINTECという大学で、昨年から一回三時間の授業をするように依頼がきているので、そのために次の形式を考案しました。二年間続けてみて、良いフィードバックをもらっているので、悪くないのだと思い始めているところです。

 対象は大学でカウンセリングを学んでいる学生。カウンセリング課程の最終学年です。

1.レクチャー「文化ーその複雑さ」

 まずは、私が 「文化」という言葉が意味することの多様さ、そして取り留めのなさ、しかしながら、わたしたちに影響を与えているものであることを、日本文化を提示しながら説明します。ここで、文化というものが、何か具体的に伝えられるようなものでもなく、その国の人々に均一に実践されているようなものではないことを、手を変え品を変え伝えます。

2.「異文化・ミニリサーチ」の説明

 その後、クラスに、私がゲストを何人か招いていることを伝えます。そのゲストは、いろいろな文化圏から来ている人たちです。今回は、中国、日本、スリランカ、ルワンダ、ハンガリーからの移民をゲストとして招きました。

 クラスの人々は、異文化を比較して調べてみたいような研究トピックを決めてもらいます。例えば、夫婦関係のあり方、子どものしつけ方、死者の弔い方、家族のあり方、食事に対する姿勢など、興味のあることひとつ選んでもらいます。興味があることであれば、なんでもいいです。

3.グループ分け

 ゲストの数と、学生がインタビューするグループの数を一致させるために、研究トピックで同じようなものを考えている人たちをまとめます。

 このトピックは、その人が興味のある事のほうがいいので、一人でインタビューする事になってもかまいません。

4.質問を検討する

 テーマが決まったらどのようなことを聞いてみたいのか、いくつかベースとなる質問を考えてもらいます。

 その際に重要なのは、その質問通りに会話を進めることが重要なのではなく、事前には見えなかったことについても、時間をとって聞いていくことも重要であると伝えます。

 また質問に対する答えが表面的である場合には、具体的に理解できているとは言えないので、細部をしっかり聞くことも重要であるとも伝えます。

5.インタビュー

 それぞれのグループは、ゲストに一人ひとりインタビューをしていきます。手持ちの時間に左右されるのですが、だいたい、一人に対して10分以内にしてもらっています。

 これは、実際にインタビューを始めると大変短く感じ、話の途中で切ってしまうことになり、不満も出ることがあります(今回も出ました)。しかし、このワークショップで重要なのは、一人にじっくり話を聞くことではなく、異文化間でどのような類似点と相違点があるのかについて理解することなので、現時点ではこの苦情は無視しています。

 私はいつもタイマーを持って、時間を計りながら、様子を観察しているのですが、どのグループもものすごく熱心に話をしています。

 このワークショップで重要な点は、話を聞く方もたいへん貴重な機会なのですが、話を聞かれる方も貴重な機会なのです。最近は、他の国から来ているからといって、どのような文化から来ているなんて誰も聞いてくれません。

 今回、話題として大変興味深いだろうなと思ったのは、中国のこと、ジェノサイドがあったルアンダのこと、共産圏のハンガリーのこと、南アジアのスリランカのことなど、そして日本のことなど、ものすごく多様な話が出てきたからです。

6.研究発表

 一連のインタビューの後で、異文化間でどのような類似点と相違点を見つけることができたのかを発表してもらいます。

 ここで、少し休憩を挟んだりまとめる時間を取れば、ある程度まとまった報告が聞けると思います。

 でも終わった後で、少し一息して発表しても、そのインタビューし終わった熱を持って発表してくれるので、こちらでも悪くはないです。

 また、インタビューした経験がどのようなものであったのかについても、語ってもらうようにしてもらいます。

7.ゲストのフィードバック

 最後にインタビューを受けてどのように感じたのかについて、シェアしてもらいます。

おわりに

 基本的にはこれだけの事なのですが、なかなかおもしろいです。終わった時の学生たちの高揚感が伝わってきますので、やってよかったと思います。

 また、今回は対象がカウンセリングを学ぶ学生なので、人をインタビューすることの練習にもなると考えています。

 WINTECからの依頼は、評判がよくないと来年は来ませんので、来年も来るようであれば、本物だと思います。

Morning blue