「リフレクティング: 会話についての会話という方法」
矢原 隆行 著
ナカニシヤ出版 (2016/9/15)
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必須技術としてのリフレクティング
私は、対人援助職に就くものすべてがリフレクティングを学ぶべきであると思っています。
なぜならば、これは、人と関わるときに支援を受ける人々に対して、そして、支援を提供する人々に対して、安全な話し合いの場を提供できる構造を提供してくれるからです。
現在、支援職がカンファレンスあるいはケース会議などの場で語る内容は、クライアントあるいは患者に聞かせることができないようなたぐいのものです。
また、ケース・カンファレンスやスーパービジョンのような場での語りは、そのケースを持ち込んだ支援者にとって痛いものです。よく事例提供者がいなくならないものだといつも感心するぐらいです。そのような場に私は居た堪れません。徐々に、そのよう場を避けるようになっています。ところが、今でも、これが臨床心理士が行う研修のあり方として主流を占めているのではないでしょうか。
そのような場が私のようなものにとって居た堪れなくなるのは、そこにいる人々の個人の性格に属するものではなく、その場の構造に根ざしているのではないかと考えることができます。
それでは、その場を安全で、プロダクティヴな場とする構造とは、どのようなものがあるのかということについて、このリフレクティングが一つの答えを提供してくれます。
本書の構成
本書は、基本編と応用編の二部構成となっています。
最初の基本編では、リフレクティングの歴史、基本的な構造や、進め方などをていねいに説明してくれます。リフレクティングの概要をつかむのには必要十分な内容であると思います。
応用編では、スーパービジョン、事例検討、連携促進などにリフレクティングへの応用を具体的に説明してくれます。
リフレクティングの実践
リフレクティングをうまくするためにはそれぞれのメンバーの成熟度が必要となりますが、リフレクティングの構造を整え、基本的な事項を確認して、とりあえずはじめてみることができます。
どのような場においても、このリフレクティングをまずは始めて見ることをおすすめしたいです。
ナラティヴの文脈においても、名称も違い、やり方も多少は違いますが、リフレクティングと同じ構造を持つチームで治療的会話を続けます。まずは、リフレクティングの構造に慣れ、それを運用していくことに慣れていく対人援助者が多くでてくること、そしてリフレクティングが多くの場所で実践されることを願う次第です。
矢原隆行先生
先日日本に帰省した時に、初めて矢原先生にお会いする機会がありました。いつかお会いしたいと思っていましたので大変嬉しかったです。また本書を頂いたこと、大変感謝しているところです。またお会いしたいです。