『「子どものうつ状態サイン」中学生の4人に1人に症状』ってどういうこと?

『見逃すな!「子どものうつ状態サイン」中学生の4人に1人に症状』(2013/5/29 15:47)http://www.j-cast.com/tv/2013/05/29176119.html という記事を読んだ。

   「子どものうつ症状はここ数年、不景気になってから増えてきています」(精神科・尾崎純子医師)という。2006年の厚生労働省調査によれば、中学生の4人に1人はうつ症状だという。北海道の小学生から高校生までの3700人を調査したところ、12.4%にうつ傾向が見られた。子どもの「うつ状態」「うつ」は意外に多いが、子どもは感情を言葉で表現するのが苦手なため見逃されがちだ。うつ状態に陥った子どものはこんなサインを発している。

 

親は「怠けてる」と勘違い…「学校行きたくない」「朝起きられない」

   うつ病とうつ症状は違うのだろうか。うつ症状は落ち込んだ気持ちがいつまでも強く続く状態で、これがさらに深刻になるとうつ病と呼ぶ。子どものうつ症状に詳しい川崎医科大学・青木省三教授は、子どもがうつ症状になると日常の生活や行動にこんな変化が現れるという。

「『朝起きられない』『食欲がない』『登校の支度に以前より時間がかかる』『原因不明の体調不良が続く』『イライラすることが増えている』『好きな物も楽しめなくなる』などです。これを親から見ると怠けているのかと勘違いします。でも、悪化すればうつ病になるんです」

   井ノ原快彦キャスター「(僕はこのサイン全部当てはままったんですよ、子どもの時に。学校はない方がいい、死にたい、地獄だとね。でも、あのダメージ、あれがあったから今があると思うんです。大人はどうやって教えたらいいんですか子どもに、このことを」

   青木教授「このサインを見ると、特別のことではなく、誰にでもある行動です。子どものうつ症状で特徴的なのは、以前好きだったゲームなのに今は全く楽しくない、楽しめない。でも、親にも説明ができないんですね、だからかえってイライラして、落ち込んで、自分を責めて、その悪循環のスパイラルなんです」

 

キッカケは学校で「いじめ」「挫折」。家庭で「両親不仲」「家族が病気・死」

   では、子どものそんなサインに気づいたらどうしたらいいのか。青木教授は「本人がガソリン切れを起こしている状態です。落ち込みが数週間続き、笑顔が見えなかったら、学校の先生に本人の様子を聞いてみる事です。うつ症状を直すには大変時間がかかります。その期間、温かく見守ってあげる努力が大事になります」

   サインに気づいたら、とにかくこどもと一緒にいる時間を増やして話を聞くことだという。

   子どもがうつ状態になる原因の大半は「学校」と「家庭」だ。学校ではいじめにあっているとか、成績や部活で挫折を味わったなどがキッカケになることが多い。家庭では両親の不仲や離婚、家族の病気や死、兄弟間のトラブルが原因となる。

 

まず、「中学生の4人に1人がうつ症状を示している」とあるが、本文に出てくる数字は、「2006年の厚生労働省調査によれば、中学生の4人に1人はうつ症状だという。北海道の小学生から高校生までの3700人を調査したところ、12.4%にうつ傾向が見られた」の部分の、12.4%である。12.4%は「8人に1人」(100÷12.4=8.06)ですよね? どこから「4人に1人」というレートが出てきたのか不明。

また、このような論旨を文字通り逆から(下から上に向かって)読んでみると、奇妙な点に気がつく。うつ症状を呈している原因として、「子どもがうつ状態になる原因の大半は「学校」と「家庭」だ。学校ではいじめにあっているとか、成績や部活で挫折を味わったなどがキッカケになることが多い。家庭では両親の不仲や離婚、家族の病気や死、兄弟間のトラブルが原因となる」としているが、4人に1人が、こんなドラマチックな状況にあるわけではないだろう、と思うのだ。

これだけ数が多いのであれば、もっとありふれたものが原因であることを想定しなければならないのではないだろうか。それは、学校教育の在り方や家庭状況の在り方そのものに対する考察が必要なのではないだろうか。「何かがあってうつ症状がある」という見方ではなく、「その存在の在り方そのもの」が及ぼしている影響から見ていくべきなのではないだろうか。

そして、これだけの「量」のうつ症状に対する問題解決を「とにかくこどもと一緒にいる時間を増やして話を聞くこと」だけで何とか乗り切れると考えるのは、少し楽観的すぎるような気がする。

 

何よりも私の懸念は、このようなデータが、うつ症状を計測するアンケート用紙を配って、それを回収し、その結果だけで判断しているのではないかということである。いくらアンケートに書いたって、その子どもが鬱状態にあるのかどうかは、本人を問診しなければ分からないのである。

研究してほしいのは、アンケートでうつ症状があるとしている比率と、医師が問診などをしてうつ症状にあると判断した比率は、合致するのだろうかという点である。