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心理療法における系統的論述(Formulation:フォーミュレーション)

いきさつ

 今、英国心理学会・臨床心理学部門編、アン・クック編集の「Understanding Psychosis and Schizophrenia(精神病と統合失調症への新しい理解)」という報告書を、翻訳パートナーのバーナード紫さんと訳している。

 この中で、統合失調症の診断を受けている人に対す支援方法のひとつとして、系統的論述(Formulation:フォーミュレーション)が紹介されていた。「協働的系統的論述(collaborative formulation)」とも表現されている。

 

概要

 本書の簡単な説明は次のようなものである。

 このような論述は、ある人の人生における出来事や関係性、あるいは社会的な状況と、その人の現在の体験や苦悩を探索するものである。困難を体験している人は専門家と協同して仮説、あるいはできる限りの推測を発展させていく。そしてそれらが、先へ進む基盤を提供するのである。診断とは異なり、系統的論述は、その苦悩がどれほど極端で、不自然で計り知れないものであったとしても、「何らかのレベルで、つじつまの合っているもの」なのである。

 

 ここから察することができるのは、クライアントの理解様式を理解して、そこから理解を積み上げていくのではないかと言うことである。つまり、どのように不可解なものでも、当の本人からしてみたら(自覚できなくとも)何らかのつじつまの合っているストーリーを展開できるのではないかと言うことではないだろうか。

 

フォーミュレーションの詳細

 ネットで検索する限り、それほど多くの資料が日本語で紹介されているわけではないようである。

 書籍としては、次のものが見つかった。

 

認知行動療法ケースフォーミュレーション入門 (臨床心理学レクチャー)

  マイケル ブルック (著), フランク・W. ボンド (著), Michael Bruch (原著), Frank W. Bond (原著), 下山 晴彦

 

この書籍の内容が簡単に紹介されているが、以下の部分が参考になりなる。

 ケースフォーミュレーションとは、個々のクライエントがどのように問題を形成してきているのかという、個別性を重視し、その事例の個別状況における問題や障害の学習メカニズムに注目するアプローチです。その上で的確な臨床判断をするために事例についての情報を集め、見通しをつけ、介入計画を立てるのです。このような実証的な手法に基づくことで、複雑な事例に対しても有効な介入が可能となります。

 

 

臨床健康心理学-ケースフォーミュレーションと心理療法

  Ana V. Nikčević (著), Andrzej R. Kuczmierczyk (著), & Michael Bruch 編 (著), 安藤 美華代 (翻訳)

 

この書籍の紹介は以下の通りである。

 本書は、臨床心理学ならびに行動医学領域の専門家が専門領域におけるケースフォーミュレーションと心理療法のすすめ方を示し、内科領域の慢性疾患を抱えるクライエントさんをどのように理解し、治療計画を立てて実効していくかについて、最新の世界水準の情報が盛り込まれています。

 

 

英国心理学会・臨床心理学部門編

 英国心理学会・臨床心理学部門編では、「Good Practice Guidelines on the use of psychological formulation(心理的フォーミュレーションのよき実践のためのガイドライン) を無料で公開している。

https://www.canterbury.ac.uk/social-and-applied-sciences/salomons-centre-for-applied-psychology/docs/resources/DCP-Guidelines-for-Formulation.pdf

 この中の説明によると、フォーミュレーションとは、次のように定義されるようだ。

 This document defines psychological formulation as a hypothesis about a person’s difficulties, which links theory with practice and guides the intervention.

 本書では、心理的フォーミュレーションを、実践と理論を結びつけ介入方法を導くための、人が抱える困難さについての仮説と定義する。

 

私の興味関心

 この手法について私が興味を抱くのは、人が見せる言動は時に不可解なものなのだが、そのことについて、相手の世界に入り、支援するものがしっかりと理解することにつながるのではないかという期待を持つからである。

 この観点からだけ見れば、いろいろなことを相手の文脈に合わせてい理解するという、私がナラティヴ・アプローチの延長上で実践しようとしていることと合致する。

 ただ、まだ全貌を理解していると言い難いので、まずは、このレポートを読むことにしたい。

 

 

Good practice guidelines on the use of psychological formulation DCP Guidelines for Formulation pdf