読了「サビカス ライフデザイン・カウンセリング・マニュアル」

サビカス ライフデザイン・カウンセリング・マニュアル──キャリア・カウンセリング理論と実践

マーク・L・サビカス著 (著)

日本キャリア開発研究センター (監修)

水野 修次郎 (翻訳)

遠見書房 (2016/9/1)

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本書の位置づけ

本書は、昨年の7月に翻訳、出版された「サビカス キャリア・カウンセリング理論」にもとづき、どのようにライフ・デザイン・カウンセリングを進めていくかについてのマニュアルとして位置づけられています。

「サビカス キャリア・カウンセリング理論」は終始理論的な枠組みからの記述なので、実際に何をすればいいのかについては、あまり明確ではなかったため、本書が望まれることになったのでしょう。

本書は、進め方について概説しているし、必要な様式も提供しているので、サビカスの理論に基づいたカウンセリングを実施していくためには必須のものとなると思います。

 

私の問題

本来は私の領域ではないのですが、キャリア領域の方々がナラティヴに興味を持っていただいているので、キャリアで語られるナラティヴ・アプローチ(主に、サビカスの理論)について、できるだけ、私なりに追っておきたいと思っています。

そこで、「サビカス キャリア・カウンセリング理論」と「サビカス ライフデザイン・カウンセリング・マニュアル」を読んでみましたが、何か芯となるところを理解していない気がしています。

何をすべきか、なぜそうすべきかなどそれなりに理解している気がしています。それなりですが・・・まあ、社会構成主義というベースが共通なのでなんとなく分かってしまっている部分もあるでしょう。

ところが、何か芯となるところを理解していない気がするので、落ち着かない気持ちでいます。

さて、それは何なのかと考えてみると、それは、この新しく「再構成」された本人のナラティヴ(あるいはポートレート、あるいはライフデザイン)を持って、再構成された自分が見えた後で、その後の人生をどのように生きていくのかについては、どのように扱うのだろうかというところが見えない気がしています。

個人のナラティヴの「再構成」は、個人的なレベルである程度可能です。しかし、キャリアという世界では、それを持って仕事をしていくという、実社会(現実)との調整が必要となる、と想像しています。

仕事をしていくということだけでなく、どうやって生きていくのかという表現のほうが適切なのかもしれません。

それから、キャリアという世界ですが、その人が知り得ている職業を超えて、選択肢を考えていく場合に、未知の職業の可能性を示唆してくれるようなプロセスも必要となります。実際、私が知っている職業の数よりも、知らない職業の数のほうが断然多いはずです。

そのような知識をどの時点で扱うのかよく見えませんでした。ここまで書いてわかったのですが、キャリア・カウンセリングの全貌がよくわかっていないので、このような混乱が起きているのでしょう。つまり、これは私の問題である可能性があります。

 

マニュアルの難しさ

マニュアルが難しいのは、手順としてある程度提供される必要があるのですが、それに縛られたり、それだけに終始しないということをどのように提示するのかがやりにくい点にあります。

マニュアルの理路整然とした分かりやすさは、その理論の複雑さ、思想的な背景を見えなくさせてしまう可能性があります。

サビカスの理論からのカウンセリングが、5つの質問をすることであるという理解に落ちてしまったときに、失われるものは何があるのだろうかと、懸念しています。

5つの質問をするだけではなさそうです。では、それ以外に何をすべきなのかについては、一生懸命読み込んでいく必要がありそうです。

つまり、マニュアルは与えられていますが、そのことについて熟考を重ねるというプロセスは省略されていないと見るべきだと思いました。

私も上にあげた点をもう少し検討していきます。

 

 

 

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