自殺予防としてのゲートキーパー

日本では、年間の自殺者が三万人を越えています。東日本大震災で、亡くなったり、まだ行方が分からない人の合計は2万人弱ですので、三万人という数のもの凄さを実感できると思います。

そのため、政府では、自殺対策に取り組んでいるようです。

http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/

毎年3月に行う自殺対策強化月間というものがあります。その、今年度のキャッチフレーズが「あなたもGKB47宣言!」ということで、かなり物議を引き起こしています。GKBは、「ゲートキーパー ベーシック」の略ですが、元の言葉を聞いても、理解できないのも最悪です。

http://www.j-cast.com/2012/01/24119773.html?p=all

http://news.goo.ne.jp/topstories/politics/70/1f305ef416ba3adedbf04efa40f965e2.html

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120123/trd12012316340010-n1.htm

 

そこで、調べてみました。

ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る人のこと」(http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/kyoukagekkan/gatekeeper.html)だそうです。

ここでは、一般人に「ゲートキーパー」になるための養成コースも推奨しているようです。パンフレットもPDF形式でダウンロードできますが、文字が上下反転しているような読みにくいものなのが、また引っかかります。

ゲートキーパーという言葉は、「門番」という意味ですので、自殺する場所に向かう前に出会う「門番」という意味なのでしょうか。英語圏でもこの意味で使っているようです。以前には、「buddy system」と呼ばれていたものに近いのかもしれません。

The Windsor Star新聞の1987年1月19日付けの記事に「’Gatekeepers’ can prevent suicides」とありますので、少なくとも1980年代後半には使われていたようです。

この効果について検討した論文がいくつか検索できました。

Suicide Prevention Strategies

http://jama.ama-assn.org/content/294/16/2064.short

Conclusions Physician education in depression recognition and treatment and restricting access to lethal methods reduce suicide rates. Other interventions need more evidence of efficacy. Ascertaining which components of suicide prevention programs are effective in reducing rates of suicide and suicide attempt is essential in order to optimize use of limited resources.

(内科医に対するうつ病の識別および治療の教育と致命的な手段を制限することは、自殺率を減少させた。他の介入に対しては、効果のエビデンスがもっと必要である)

Gatekeeper training to prevent youth suicide – does it work?

http://www.psychologytoday.com/blog/promoting-hope-preventing-suicide/200909/gatekeeper-training-prevent-youth-suicide-does-it-work

 

あまり効果があるかどうかを判別するためのエビデンスが集まってきているようではなさそうです。私としても、これが効果を発揮するための土壌が必要なのではないかと感じます。土壌とは、仕事、勉強、世間体などなんかよりも、人の命が大切なんだということを、理解し、そのために行動できるような環境(文化)だと考えます。

万が一の場合、放射能汚染によって人の命が失われる可能性があり、それが現実のものとなろうとしているときにも、一部の利権を守ろうとしているようでは、この土壌はあまり育ってきていないような気がします。

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